オールビスク・ドール、グーグリー・ドールについてのご注意




Above: A genuine, authentic antique all bisque 292 doll.
(上の画像は本物アンティークのオールビスク292です)









2008年11月現在、インターネットで、現代製のオールビスク、グーグリーなどを、アンティーク(または1910、20年代製のヴィンテージ)として販売しているサイト(オンライン・オークション、又はライブ・オークション、更には、日本海外を問わずネットショップ等等・・・)をよく見かけるようになりました。

フェークドールを故意にアンティークとして販売しているわけではなく、セラーの大半が”本物”と信じてアンティーク価格で流通している状況です。

アメリカでは相当以前から問題になっていることですが、最近はフェーク・アンティークドールが日本へも流れ始めているようです。
ドイツのリプロ製造団が、プロでさえ一見アンティークと見紛う程精緻かつ巧妙なリプロを”アンティーク”として流しているため、ディーラーやネットショップでは、実際にフェークを”本物”と信じてなんら疑うことなく販売している例が多いのです。
逆にいえば、プロの目でさえ、一見騙せるほど上手なリプロということになります。
はじめからリプロとして販売されるのでしたら、それなりに価値もあり、コレクターにも喜ばれる完成度高い子たちですが、アンティークとして、アンティーク価格で流通していることが問題です。

絵画、陶器、家具・・・アンティークには必ずフェークの恐怖がつきまとうものですが、残念ながら人形も例外ではありません。
繰り返しますが、このページの主旨について、リプロをアンティークと偽りアンティーク価格で販売することに問題があるのであって、作家さんのサイン入りのリプロダクション作品は芸術作品として愛眼されるべきものであり、意を全く異にするものです。








まずは、現代製とアンティークの違いを見ていただきたいと思います。


こちらが本物アンティーク、ケストナー製と云われている292ドールです。




そしてこちらが現代製292ドールです。



こうして比べるとお顔の違いが明らかです。
ヘッドマークは以下のように、それぞれ刻印があります。


左がアンティーク、右が現代製ヘッドです。
現代製はリムの幅も広く、数字フォントがアンティークと異なっています。
肌質もこうして比べると違いが分かりやすいです。


現代製とアンティークとの大きな違いは、まず一目見てアイカットの大きさです。
現代製の子は目がとてもくりくりとしています。
この特徴は292に限らず、他のナンバーの現代製にも共通しています。
次に、睫、眉毛、リップの色合いがアンティークよりも濃い目で若干艶があります。

お顔を含むビスク全体の色合いは、一見アンティークと見紛うほど、上手です。
不純物も微妙に混ぜてアンティークの質感に似せています。
目はブロウタイプのグラスアイです。アンティークのデッドストックを使用しているのか、現代のものなのか、
ちょっと判断が難しいです。両方の場合があるのではないかと思います。
また、目は大概固定のようです(グーグリーについては以下参照)。
石膏は現代製には見えず、やはりビスクの肌同様、不純物をまぜて古いように見せていると思います。
(丁寧にヘッド内部にも汚れを付けて経年の事実があるように見せています)

ヘッド、ボディの窪み(耳の後ろや鼻、口周辺、指先等)には故意に埃や汚れを付けてあります。

衣装は大抵”オールオリジナル”と表されていますが、生地は実際にアンティークを使用したものは少なく、
年代を経ていてもビンテージ程度のものが多いようです。
わざと皺が付いていたり、紅茶などで汚したと思われるシミ、生地の色落ちなどが演出されています。


現代292全身像


右の子の手のひらは特に故意に汚された感じです。


現代製オールビスクの子たちのシューズはこのタイプが一般的のようです。
確証はないのですが、アンティーク・オールビスクにこのシューズタイプ(真ん中に黒リボン)は無いのではないかと思います。
(もし今後存在を確認できましたら訂正させていただきます。アンティークでこのタイプのシューズの子をお持ちの方がおりましたら、
ご連絡くださると嬉しいです!)。


続いての画像は、アンティーク219(真ん中の子)と、現代製292の子たちとの3ショットです。
アンティーク219はお顔が大きいのに、現代製292に比べてアイカットの大きさが半分以下です。
(但し219はグーグリータイプではありませんが)
思うに、現代製のオールビスクは、小さいサイズのグラスアイのサプライが無く、グラスアイのサイズに合わせてアイカットも自然に大きめにせざる負えない
のではないか?と思います。
現代製の子たちは睫の濃い目なのも際立っています。

現代製オールビスクは、”アンティーク”として、オリジナルボックス入り、または台紙に張り付いた状態で、ペアまたは3、4人一緒に
出回っているようです。
「旧東ドイツの工場跡地からデッドストック状態で見つかった」と説明される場合が多いようです。
確かにそのようにして、パーツやモールドが見つかった例はあったと思いますが、ベルリンの壁崩壊から既に20年が過ぎた現在、オールオリジナルの小さな子たちの発掘がそう頻繁にあるとは思えません。
また、現代製オールビスク、グーグリー共に、日々進化を遂げているのも事実です。
今後、更にアンティークに近いアイカットのオールビスクが出てこないとも限りません。
特にグーグリーでは、スリープアイまで作って、更にアンティークに近づけて、現在高額で販売されている例をイーベイ・オークションなどで見かけます。
(後述のジャン・フォウクさんのご体験もご参照ください)









次に、アンティークと、現代製グーグリーの比較です。


左が現代製AM323、右がアンティークのAM323です。
オールビスクの子同様、こうして並べて見ると違いが明らかです。
ヘッドマークは以下のように、それぞれ刻印があります。


左がアンティーク、右が現代製ヘッドです。
少々分かり難い画像で申し訳ありませんが、オールビスク同様、数字フォントがアンティークと異なっているのがお分かりいただけるでしょうか。


全身像です。
お顔の大きさに大差はありませんが、現代製の子は、アイカットと身長が大きめです。
現代製の子は、ボディもアンティークを模したものです。一見アンティークと見紛うほどよく出来ています。


コンポジションボディはむしろ、現代製の子のほうがしっかりとしていて質の良い作りです。
アンティークAMの場合、トルソ部分は材質のよくないコンポジションかペーパーマシェ、または桐塑の表面に色を塗っただけのような簡素なものが多いです。
現代製ボディはアンティークに比べると量感もあります。

現代製の子のシューズにはヒールがあり、ソックスの網目模様もよく浮き出ています。これも見分けるヒントになります。
全体に本当に彩色が上手なのですが、よく見るとアンティークには既に見られない表面の艶があります。
アンティーク風にわざと色むらや亀裂、小さな欠けなどを表現している場合もあります。


現代製グーグリーは、オールビスクと同じく大概はペアで販売されています。
上の写真の子たちも」オールオリジナル」とのことでしたが、グーグリーの年代とドレスのデザインに少々差異があります。
布も全てがアンティーク使用されているわけではありません。
イーベイオークションでは一体のみ、時にはヘッドのみ、ボディのみ等様々ですが、全て「アンティーク・ビンテージ」として売られている場合があります。
またAMに限らず、様々な工房、モールドにご注意ください。
イーベイオークションは特に、わざと画像をすくなく、ピントの緩い写真で本物との判別が難しいものが多いです。
また最近はスリープアイだからといって、アンティークとは限りません。現代製スリープアイが登場しており、判断が非常に難しくなっています。
現代製のスリープアイは瞼の色合いにややピンクがかっていることも特徴だと思います。
イーベイに限った場合、主にドイツのセラーは確信犯で悪質ですが、何も知らずに購入された方がリセールされている場合もありますので、全世界どこからのものでも慎重にご検討いただくことが必要です。




現代製323のボディです。アンティークと同じような汚れをつけてとても自然に見せています。
下着は縫いつけられており、シミも付けられています。

現代製323の主な特徴は、目がブロウグラスアイでなく、ペーパーウェイトアイであること。
アイカットも大きく、睫も濃い目でバランスが整っていること。
個別で異なりますが、眉毛と唇の色合いはとてもアンティークに近い場合があります。
ウィッグは人毛、モヘアの両方の場合があります。モヘアはそれほど古いものを使用しているとは思えません。
ウィッグにペイトが張り付いていない場合が多いようです。
接着剤はアンティークのように見えるものを使用しています。



アンティークAMグーグリー。
小さなアンティークビスクの場合、”自然な不均質”こそが大きな魅力の一部だと思います。 100年近く前に人間の手によって彩色された玩具です。










アメリカでは、現代製オールビスク、グーグリーについては既に何年も前から問題になっており、ブルーブックの執筆者でもあるジャン・フォウクさん(ジャンさんのサイトリンクはこちら)もサイトやその著作内で警笛を鳴らし続けておられます。
今回ジャンさんに了承を得て、以下サイトへリンクさせていただきました。

アンティーク・ドールディーラーから成るアメリカの非営利団体 The National Antique Doll Dealers Association, Inc.,の NADDA.ORGサイト内、 THOUGHTS & IDEASに、 ジャンさんへのインタビューが掲載されています。

2005年のインタビューですが、最後のほうに、今一番気になっていることは?という質問に対し、フェークドール問題を挙げられています。

ここの部分を翻訳させていただくと:
現在アンティークドールマーケットに流布しているフェークは大概ドイツから流れてきたものです。古く見せかけたフェークドールを「古い工場跡で見つかった本物」として悪評の高いディーラーによって確信犯的に市場に流れています。この状況は特にオールビスクドール市場で顕著です。
インターネット大手売買サイトでもこれらのフェークドールがアンティークとして紹介されているのを見ることができます。そのうちの多くは、”台紙に縫い付けられたままのオールオリジナル”のペアだったり、、箱入りのセールスマン・サンプルだったものと称したり、カードの台紙に5体のオールビスクが縫い付けられたセットだったりと様々です。
中でも、完全に模造品であるグーグリーが現在広く流布しています。292は本物のケストナー製と云われているオールビスクの番号でもありますが、その292をヘッドマークとした非常に巧妙なフェークドールが市場に出ています(下画像、本物のケストナー292画像参照)。 とはいえ、この模造292モールドはケストナーの292とは全く違ったモールドで1900年当時には全く存在しなかったものです(、ので違いは明らかです)。 ホイバッハの、特に、オリジナルボックス入りのオールビスクにもご注意ください。 これらのフェークドールは現在再販売されるなどして、オークションやディーラーのショップカタログ、ショーなどで、アンティークとして売られるようになっています。 残念ながら、フェークドールの存在には、今後もずっと悩まされそうな状況です。

第二の懸念は、雑誌やオークション、ショーなどで見かけるフェークのボックス入りのセットについてです。確かに、本物のアンティークのセットが存在することも事実です。しかしながら、現在流通している「箱入り」の大半が、巧妙かつ精緻な模造品を作る人々によって市場に流されたものです。製作者の中には、きちんと”古いマテリアルを使って現代に作られたリプロダクション”として販売する人もいますが、人から人の手に渡る間に、いつの間にか”アンティークのオリジナル”と誤って称される場合が出てきます。これらの模造品の大半はヨーロッパから流れてきています。とても優れた工芸品ですし、きちんと”現代製”として販売される限り、問題の無いことなのですが。

インタビュー訳は以上です。
次に、ジャンさんから直接お聞きしましたジャンさんご自身の体験について、英文でいただいたものを以下に翻訳します:

現代製ドールの中には、一部の古い素材を使用したものも確かにあると思いますが、ヘッド自体は現代に色づけ、ペイントされたものです。アンティークドールと同じ当時のモールドを使っているヘッドもあるかと思いますが、アイカットは明らかに大きすぎるものです。
多くの古いモールドやパーツは、当時の使用済みのもので、旧西ドイツ圏で見つかったものです。
(ケストナー・グーグリーの現代製フェークがあるかどうかについての質問に対し:)はい、ケストナー・グーグリーの偽者も存在しています。わたし個人も、大手のライブ・オークションで一体落札してしまったことがあり、落札後にリプロと判明し返品した経験があります。最初オークション会場で見たときには、とても高品質でリプロとは思えないような出来のものでしたが、落札後、何かしっくりしないものを感じて気になりましたので、人形のディテイルを調べてみると、フェークであることが分かったのです! 35年も人形に関わっているわたしにもこのような体験があるのですから、誰にでも起こり得る可能性があります!

以上です。
ジャンさんほどのベテランディーラーさんでも見紛うほど優れたフェークドールたち。とても危険な存在であることがお分かりいただけると思います。
特にケストナー、KR、ハーテルなどのアンティーク・グーグリーは非常に高額です。
何度も描きますが購入に際しては慎重にご検討ください。

また、tentenさんのご指摘により判明し、ジャンさんにもご確認いただいた事実ですが、グーグリーに関する本、Anita Ladensackさん著、 The History and Art of Googlies の138ページ(上段左隅)に現代製グーグリーの写真が紛れ込んでおり、フェークと明記がないため、現在も混乱の一因となっています。
リプロ製造ディーラーや、本物と思われている方などが、「専門書にも載っている本物」としてこの画像を引用するのですが、実際にこの一体のみは現代製です。
この本の出版当時(初版は2002年)、このモールドがフェークと判明していなかったのか、記載漏れがあったのかは不明ですが、著者自身はっきりしなかったようで、注釈は以下のようにやや曖昧に記されています:
「上の画像3体には全てに292.10の刻印があるものの、左隅の一体のみモールドが異なる。3体とも全長4 1/2インチ(12cm)。右側の2体は通常ケストナー製として知られ、スウェーデンの民族衣装をまとっているものと云われている。」
将来増刷される場合にはきっと修正されるか注釈を入れられることと思います。


The History and Art of Googlies


138ページ上段、左隅の子は現代製292です。











このページではオールビスク292とAMグーグリー323のフェークドールについて主に紹介しましたが、フェークの脅威はオールビスク全体、グーグリー全体に及んでいます。
箱入りやオールオリジナルのモールデッドのオールビスク、ペインティドアイのオールビスク、ピアノベビーなどのフィギュアリーンなどにも慎重な検討が必要です。
またこの先、フェークもどんどん進化を遂げていくことと思います。どうぞご注意ください!

一連のフェークドールたちは、非常に上手でかわいらしいお人形たちです。実際にリプロとして販売されていれば、誰もが製作者に感謝し、大事にかわいがられる子たちだと思います。
実際何故アンティークと偽る必要があるのか、非常に残念なことです。

また、このページの記載いおいて訂正すべき点、ご意見、更にフェーク新情報等ございましたら、メールをお待ちしております。HPトップよりご送信ください。




さしでがましいようですが注意喚起の意味を込めて、このページを今後のご参考にしていただければ幸いです。

このページはtentenさんのご協力により作成することができました。
tentenさんからの質問メールに端を発し、わたしもこの問題に気付くことになりました。 もしメールをいただいていなかったら、いつかわたしもフェークを、アンティークとして紹介していたかもしれません。

tentenさんの熱意とご協力に感謝いたします。ありがとうございました。
尚、このページで紹介している現代製グーグリーと現代製292、アンティーク292の子たちは、tentenさん所蔵、わたしが撮影したものです。



最後に、雑誌 ”Doll News” (Spring 1991) のアンティーク・グーグリーの特集記事をおまけで掲載させていただきます。
それぞれの小窓をクリックして開いた画像をもう一度クリックしていただくと更に大きくなります。
色々な工房の子が紹介されています。


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Doll News Spring 1991 Issue
Cover: KR Max & Moritz


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